【書評】職業としての小説家 村上春樹

職業としての小説家 村上春樹

村上春樹の最新刊。まず、ジャケットが素晴らしい。最新のPENでも特集されて
いるアラーキーこと荒木経惟。いきなり本論からずれて恐縮だけど、アラーキー
先生とはもう4年くらい前、お亡くなりになった酒井田柿右衛門先生、武雄の
人間国宝である中島宏先生、当時の佐賀県知事である古川先生(現衆議院議員)
との呑み会(嬉野になる大正屋の離れ)に、なぜか、僕が呼ばれたんだけど、
印象に残ったのは、アラーキーのシャイで控え目なところ。ご自身の意見を言う
前に、必ず、意見を聞かれるところ。そして、「そうだよ。そうだよ。それが
正しいんだ。」ってニコニコして言われるところ。見てくれから、破天荒で
無頼派(古い?)って思っていたので、相当、違和感がありました。

そのアラーキー先生から、「市長さん、ここは一つ、写真撮ろうか?」って言わ
れたのに、撮ってもらわなかったのが、市長時代の三大後悔(後の後悔は?って
言われても困りますが)の一つです。相当恐縮して遠慮していたのは事実です。
僕も割とフツーなんです(苦笑)。話を戻しますが、ジャケットのモノクロが
渋い。大正屋で僕はアラーキーさんに、「カラーと白黒の違いは?」って聞いた
ときに、アラーキーさんは即座に、「カラーは生きること。白黒は死ぬこと。」
と回答されましたが、思わず、村上さんのジャケットは、アラーキー的にはどう
いうことなんだろうって首をかしげましたが、最後まで読み切ったときに、僕
なりに意味が分かりました。間違っているかもしれないけど、これは村上さんの
集大成であり、遺書であり、墓跡であること。しかしながら、ここは相当矛盾
するんだけど、集大成でありながら未完成。遺書でありながら決意。墓跡であり
ながら軌跡であること。

題名は、「職業としての小説家」であるんだけど、誰がどう読んでも、「職業
としての村上春樹」あるいは「人生としての村上春樹」そのもの。極めて個人
的で偏っているんだけど、恐ろしいほどの普遍性がそこにある。

村上春樹の作品は翻訳を除き、ほとんど読んでいるんだけど、この本を読んだ
ときに、過去のエッセーは、彼一流の照れ隠しだったんだなって分かる。何回
か、「他人の批判は気にならない。我が道を行くのみ。」という覚悟が書いて
あって、相当タフな人なんだなって思う反面、全ての小説は、死が多用される
ギリギリの繊細感で成り立っているので、何でそうなるんだろうかって思って
いたら、大ヒットした「ノルウェーの森」で相当酷いバッシングを食らって
傷ついたこと、また、新作を出せば出すほど、これまた酷い非難を受けて、国外
に逃亡せざるを得なかったこと、など、やっぱりそうだよねって思うところも
結構あった。

しかし、村上春樹の凄さは、その逃亡すら自分の強みに、そして、作品に昇華
させていくところ。とても参考になる。村上春樹をある程度読み込んでいる人
たちにとって特にお薦め。

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